顎を動かすと“カクカク”と音がする …
顎が痛くて、口をあけられないし、食事も満足にできない …
慢性的な顎関節の異音、顎の痛み、口を大きく開けられないなどの症状、または顎関節症でお悩みの方、慢性的なめまいや耳鳴りなどの不定愁訴でお悩みの方は参考になさってください。
顎関節症は顎の筋肉の疼痛、顎の関節音、顎関節の機能障害などを症状とする慢性疾患です。 自覚症状も軽症、重度と様々で、重度の場合、めまいや肩こり、痛みなどの発現が全身におよび日常生活に支障をきたすこともあります。
不定愁訴とも言われる顎関節症ですが、実際未知の部分も多く、頬杖などの悪癖や近年の軟食化(やわらかい食事が中心)の影響など、生活習慣も原因のひとつとでは?と考えられています。
顎関節症でお悩みの方は自己診断からお試しください。
まずは! 顎関節症自己診断!
以下のチェック項目より思い当たる症状をご確認ください。
いくつか該当する方は顎関節症の疑いがあります。
- 食べ物を噛んだり、長い間しゃべったりすると、顎がだるく疲れる
- 顎を動かすと痛みがあり、口を開閉すると、特に痛みを感じる
- 耳の前やこめかみ、頬に痛みを感じる
- 大きなあくびや、りんごの丸かじりができない
- 時々、顎がひっかかったようになり、動かなくなることがある
- 人差し指、中指、くすり指の3本を縦にそろえて、口に入れることができない
- 口を開閉したとき、耳の前の辺りで音がする
- 最近、顎や頸部、頭などを打ったことがある
- 最近、かみ合わせが変わったと感じる
- 頭痛や肩こりがよくする
出典:KOMPAS(慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト)顎関節症より »
顎関節症発症に関わる生活習慣自己診断!
以下は顎関節症の発症に大きく関わる生活習慣や悪癖です
チェック項目の該当数が多いほど顎関節症になりやすいと考えられています。
- 「歯ぎしりをしている」といわれたことがある
- 起床時、日中、気がつくと歯をくいしばっていることがある
- 食事のときは、いつも左右のどちらか決まった側でかむ
- 物事に対して神経質な面がある
- 職場や家庭で、ストレスを感じることが多い
- 夜、寝付きが悪い、ぐっすり眠れない、途中で目が覚める
出典:KOMPAS(慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト)顎関節症より »
■ 顎関節の周辺によく見られる症状
当院では次のような症状を確認できたら顎関節症を疑います。
開口障害 | 痛みで口を大きく開けることができない。 一時的に口を閉じることができなくなることがある(ロッキング現象)。 |
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顎関節痛 | 顎を動かした時(食事など)に顎関節の痛み・頬の痛み・こめかみの痛みがある。 |
顎筋肉痛 | 顎を動かしていると(食事の時など)顎がすぐに疲れる。 顎や頬などに筋肉痛がある。 |
顎関節音 | 顎を動かすと「カクカク」などと異音がする。 |
■ 顎関節症でよく見られるその他の症状
耳に痛みを感じたり、耳鳴りを感じることがある |
偏頭痛や目の疲れを感じることがよくある |
首や肩、背中の痛みや肩こり、腰痛などの痛み |
■ 顎関節症のタイプ
顎関節症は状態や症状などからを以下の5タイプに分類されます。
顎関節症Ⅰ型 筋肉の障害 |
咀嚼筋などの筋肉の過緊張による障害。 |
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顎関節症Ⅱ型 関節包・靭帯の障害 |
関節包は骨と骨を継ぐ関節を包む繊維性の膜で、関節の円滑な稼動を助けています。靭帯は関節包の外側の骨と骨を繋ぐ紐状の繊維組織で、関節が離れてしまわないように保持したり、関節の動きの方向性を制御しています。これら線維組織の炎症などによる障害。 |
顎関節症Ⅲ型 関節円板の障害 |
関節円板は上顎と下顎の骨の間にあり、関節のスムースな動きを助けています。この関節円板の位置がずれたり、変形すると、顎を動かした時の異音が起こるようになります。重度の場合は口の開閉も困難になります。 |
顎関節症Ⅳ型 骨の変形 |
顎関節の骨や軟骨が変形してしまう障害。 |
顎関節症Ⅴ型 その他 |
上記以外のものや、これらを併発している場合。 |
参考:weblio辞書「顎関節」 – 関節包? 顎関節の構造 »
TCH(歯列接触癖)と歯軋り(ブラキシズム)
顎関節症の大敵! TCHと歯軋り
顎関節症にはTCH(歯列接触癖)と歯軋り(ブラキシズム)が大きく関与していると言われています。
顎の筋肉に過度な負担のかかるTCHと歯軋りは、筋肉の緊張や疲労に繋がり、顎関節への負担が増えるため、顎関節症だけでなく様々な不定愁訴に関わっていると考えられます。
つまり、悪習癖とされるTCHと歯軋りの改善は、顎関節症や口腔要因の不定愁訴の改善に繋がると考えることができるのです。
■ TCH(歯列接触癖)とは?
TCH(歯列接触癖:Tooth Contacting Habit)は起きている時に無意識にしてしまう“上下の歯を持続的に接触させる癖”です。
人間は唇を閉じていても上下の歯は接触しないのが普通です。
歯が噛みあうのは会話や食事の時のみで、上下の歯の接触時間は1日平均では17.5分という調査結果もあります。
ではTCH(歯列接触癖)のある方の上下の歯の接触時間はどうでしょう?
接触時間の増加は間違いありませんし、顎の筋肉にはその間相当な負担がかかっていることになります。筋肉の疲弊はもちろんのこと、顎関節への過度な緊張が続くため関節の血の巡りも悪くなります。
■ 歯軋り(ブラキシズム)とは?
歯軋りというと就寝中に“ギリギリ”と歯と歯を過度にこすり合わせる状態をイメージすると思いますが、ここで取り上げる歯軋りもTCHに対するものとして扱うため就寝中の歯軋りを指します。
就寝中の歯ぎしりを気にされている方もいると思いますが、歯軋りは歯と歯による過剰な接触であり、過剰な圧力がかかるため、筋肉の緊張や疲労、顎関節への負担になります。
近年では、昼間のTCHと同様に顎関節症の要因のひとつとして考えられています。
歯軋りは咬合習癖の一形態【ブラキシズム】として3つに分類されています。
グライディング | 上下の歯を強く擦り合わせる臼磨運動で“ギリギリ”という特異なきしり音がします。睡眠中に多い一般的な歯軋りで、歯と歯の過剰接触が原因によるエナメル質や象牙質の損傷(咬耗症:こうもうしょう)の心配もあります。 |
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クレンチング | 上下の歯の強い噛み締め(くいしばり)です。昼夜を問わない習癖ですが、音が出ないこともあり自覚症状はほとんどありません。 |
タッピング | 上下の歯をカチカチと過剰に噛む動作です。昼夜を問わない習癖ですが自覚症状はほとんどありません。 |
■ 顎関節症の発症
TCHや歯軋りが要因の顎関節症の場合
顎関節症はTCHや歯軋り、ストレスなどのシナジー効果に顎関節が耐え切れなくなった時に発症するとうい考え方もあります。
普段、顎関節症の患者様に接して感じることですが、TCHや歯軋りと顎関節症には確かに深い関係があるように思います。
顎関節症の顎関節と正常な顎関節
正常な顎関節と顎関節症の顎関節について、口を閉じている時の顎関節と関節円板の状態を例に説明します。
■ 正常な顎関節
関節円板が下顎頭に帽子のようにかぶさった状態です。
■ 顎関節症の顎関節
関節円板が前方に転移
関節円板が前方にずれて変形した状態です。
口を開けた時に下顎頭が関節円板にひっかかって“カクン”と音がします。
■ 顎関節症の顎関節
関節円板の前方転移がさらに大きい
関節円板がさらに前方にずれて変形も大きくなった状態。
下顎頭がひっかかって前に出られないため、口を大きく開けることができません。
顎関節症の治療のゴール
顎関節症の治療では「完治」という言葉は使いません。
患者様ご自身が顎関節症に対する自己管理法を身に付けることができれば、それが治療のゴールになります。
一度ズレてしまった関節円板は多くの場合、元の位置には戻りません。
それでも、機能的な障害がなくなり、症状が再発しなければいいのです。
機能的な障害がなくなるとは、「痛みを伴わずに指を3本縦にしてすっと口に入る」「ガムを15分かめる」「朝の開口障害がない」などです。
カクカクという関節音は残っていても問題ありません。