コロナと歯周病・全身疾患について

コロナと歯周病・全身疾患について

歯周病とコロナの関係

歯周病(歯周炎)は、歯肉に潰瘍を引き起こし、その周囲の粘膜の防御機能を弱めることが知られています。この潰瘍が露出していることで、コロナウイルスによる体内への侵入リスクが高まると推測されています。

中国における重症の新型コロナウイルス患者の解析結果によると、年齢が高いほど、歯周病の重症度とコロナの重症度に明らかな相関関係があることが明らかになっています。これは年齢と歯周病の有病率との相関関係にも似ています。

歯周病の原因は様々あります。咬み合わせの問題や歯ぎしり・食いしばりの習慣により、特定の歯に強く力がかかっている場合、その歯を支える周囲の骨や歯肉に炎症が起きます。また間違ったブラッシング方法で歯肉を傷つけることでも歯周病は発症します。

最近、未治療の中等度または重度の歯周炎が、新型コロナウイルスによる肺炎を悪化させる可能性があると考えられています。逆に、初期の新型コロナ肺炎症状がある患者さんに歯石除去や歯のクリーニングなどの歯周治療を行うと、血液中の「Dダイマー」という量を減少させます。これは歯周病の患者さんが歯周病治療を受けた時にも見られるものです。

つまり、歯周病の治療をすることは、新型コロナ肺炎の重症化リスクを減少させる可能性があると言えます。

このことを確認するには、新型コロナウイルス感染患者さんの口腔内を確認するような研究が必要です。

コロナと糖尿病の関係:全身疾患の悪化について

また、年齢があがるにつれて糖尿病患者が増えるという、よく知られた相関関係にも似ています。

糖尿病は歯周病の危険因子です。糖尿病の早期からお口の合併症に注意を払う必要があります。国際糖尿病連盟は、定期的な糖尿病の検診に加えて、ブラッシング時の出血や歯肉の腫れの検査といった口腔内の評価を年に数回受けることを推奨しています。

高血糖の状態は、お口の粘膜にダメージを与え、歯肉の治りを遅らせます。歯肉には歯周ポケットが形成され、歯槽骨が溶けるといった歯周病の原因となります。

そのため、歯周病は全身の炎症を誘発し、その結果、慢性的にインスリンが効きにくい状況(インスリン抵抗性)が強くなります。高血糖、歯周炎、炎症(口腔内および全身)、インスリン抵抗性という悪循環が発生してしまいます。効果的な治療なしには、すべての病気をコントロールしにくくなります。

最近発表された長期にわたる研究で、糖尿病の患者さんにおける肺炎予防には、口腔ケアがとても重要だったという結果が示されました。

集中的に歯周治療を受けた糖尿病の患者さんでは、肺炎のリスクが平均66%も低かったことがわかりました。これらの結果は、糖尿病と歯周炎がある患者さんでは、新型コロナウイルスの感染がなくても、恐ろしく高い肺炎リスクを有していることになります。

糖尿病と新型コロナ肺炎による死亡率の増加との関連は、これまでに述べた側面だけでなく、歯周病という付加的な全身的影響にも関連している可能性があります。歯周病は血糖値に悪影響を与え、体の免疫系にまで影響を与えます。

歯周病はまた、歯周組織が破壊されることで体内に放出されるサイトカインやメタロプロテアーゼなどといった化学物質(メディエーター)が歯周病の組織から循環系に放出されるため、全身の炎症をさらに悪化させます。糖尿病患者は、お口の疾患による死亡リスクが高いことが知られていますが、逆に、歯周病患者では糖尿病になるリスクが明らかに高いことも知られています。

歯肉のバリアー能力が十分に機能していれば、口腔内の病原性ウイルスや細菌が血液中に侵入するのを防ぐことができます。

特にハイリスクである糖尿病の患者さんでは、毎日の定期的な歯磨きだけでなく、うがい液をつかってノドの消毒をすることで、新型コロナウイルス感染による肺炎症状を軽減する可能性があることを意味しています。

歯科医師と糖尿病専門医とは、日々患者さんについての情報交換をしています。糖尿病など全身疾患をお持ちの方は、その症状を悪化させないためにも、ぜひ歯科医院で定期的な歯肉のチェック、歯石除去、歯のクリーニング、効果的な歯磨きの仕方のチェックを受けることをお勧めします。

ステイホームや3密回避などで歯科医院への受診が遠のいている方もおられるかと思います。

歯科医院は以前からB・C型肝炎をはじめ、歯科治療で発生する飛沫による感染についての様々な対策をしてきました。新型コロナについても感染の対策を講じていますので、かかりつけの歯科医院を受診するようにしましょう。

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